第37話 (92.10.12放映)

〈解説〉

 ケンが主人公のシナリオは数本あるがその中でもケンが一人だけで立ち向かっていくというのはこのシナリオのみであり、その意味でも特に印象的な一作に仕上がっている。

〈ストーリーあらすじ〉

 ある日、フラワーハウスから帰る途中で奇妙な角をひろったケン。なんの角とも分からない不思議な角をとりあえず持ち返ると、その晩ケンは二本の角を持つ不思議な馬の夢を見るのです。次の日マリーベルに聞いてみると、この奇妙な角はどうやらユニコーンの角らしいのです。

 「あら? ユニコーンって角は一本じゃなかったかしら?」‥‥しかしユニコーンの国には二本角のユニコーンの石像があるのです。昔、泉の守り神として人間に大切にされてきたユニコーン。ところがある日、そのお供え物を通りがかりの旅人が勝手に食べてしまうのです。やってきたユニコーンは困って自分の角を折り、村へ行ってそれで食べ物を買ってきてくれるよう頼みます。しかしずるがしこい男は、そのまま行ったきり帰ってはこなかった‥‥だまされたと知って怒ったユニコーンは二本角となり、そのまま石像になってしまったのです。人間に疑いを持ち、自分の心を閉ざしてしまったユニコーンのモール。今まで何度も魔法をかけてはみたけれど、どうしても元には戻らなかったというのです。

 「マリーベル、ぼくをユニコーンの国につれてってよ! モールをもとにもどしてあげて、ともだちになりたいんだ!」 ケンが角をひろい、そして夢を見たということはもしかしたらケンならモールを助けられるかもしれません。魔法の香水を使って、雲の上にあるユニコーンの国へと飛んでいくのです。

 ‥‥雲を抜けた向こうの空に浮かぶ大陸、ユニコーンの国。長老に連れられて大陸の中央の巨大な山脈の山頂にあるモールの石像の元へとやってきました。その石像はやはりケンが夢で見たのと同じユニコーンでした。

 「モール‥‥かわいそうに‥‥」 ケンがモールをなでてあげると、とつぜん石像の目が赤く輝き、その二本角から暗黒の気がただよってきたのです。「こ、これはモールが長い間抱き続けた人間に対する疑いの心じゃ!」 この黒い気こそがモールを石像に変えた原因なのです。

 「みんな、逃げるのよ!」 しかし時すでに遅く、ケンが気付いた時にはマリーベルたちはすべて石像へと変えられてしまっていたのです。

 動き出したモールに近付き、語りかけるケンに「私と友達に? 私は人間を信じない、人間は嘘つきだ!」「そんな‥‥たしかにモールさんをだましたヤツはわるいけど、人間だってみんなうそつきってわけじゃないよ!」 しかしモールはまるでとりあってくれもしないのです。「じゃあ、どうしたら信じてくれるの? ぼくにできることならなんでもするよ!」

 「なんでもするだって? ‥‥よし、だったらやってもらおうか。」 とつぜんモールとケンの間に大きな地割れが。「さあ、こちら側に渡ってこい!」 しかしその地割れは底が見えないほど深いのです。足がすくんでしまうケン‥‥「ふん、やっぱりさっきの言葉は嘘だったんだな。」

 「嘘なんかじゃないよ! ぼく、やるよ! ここを飛んだら、信じてくれるね? おねえちゃんたちをもとどおりにしてくれるね?」「ああ、信じよう。」‥‥でも底の見えない大きな地割れを目の前に、足のふるえはどうにも止まりません。しかしケンは、みんなを助けるため、そしてモールを救うために勇気を出して飛ぶのです。

 そのケンの姿を見てはっとするモール。向こう側に着地はできなかったものの、地割れの端になんとかしがみつくのです。

 「モール、飛んだよ、ぼく、飛んだよ!」 その瞬間、地面がくずれてケンは地割れの中へ真っさかさまに落ちていってしまいます。「ケン!」 モールはとっさに地割れへ飛び込み、ケンを助け出すのです。

 「モール、わかってくれたんだね!」 するとモールの二本の角は抜け落ち、モールの体も元の白いユニコーンの姿へと戻るのです。持ってきた角をユニコーンの体に戻すと、角が光り出してマリーベルたちも元の姿に。「やったね、ケン!」

 「ケンが私に、信じる心を思い出させてくれたんです。ありがとう、ケン!」 今日はモールが元に戻ったのを祝ってみんなでお祭り。これで二本角のユニコーンのお話もハッピーエンドです。

〈次回予告〉 〜 #38 「タンバリンがつかまった!」 〜

 はーい、わたし、マリーベル。あたしたちの前に、妖精をしんじる女性がやってきたの。その名は、ジーコ。なんだかあやしいと思ってたら、その正体は、ジートだったの。ジート! 自分が有名になりたいから妖精をつかまえるなんて、最低よ! 次回、花の魔法使いマリーベル、『タンバリンがつかまった!』。マリーベルに、おまかせよ!


  

Marybell Story Digest Ver.1999.07.24