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第43話 (92.11.23放映)
〈解説〉 |
42話に続く屈指の名作『雪の降る日の願いごと』である。姉弟ケンカというある意味ではありきたりとも言える内容ではあるが、そんな理屈を一切抜きにしてまさに至福の一作である。
〈ストーリーあらすじ〉 |
空の上のずっと上には、白い砂糖を一面にふりまいたような、すてきな雪の妖精の世界があります。雪の妖精の世界の女王様、スノーンの楽しみは、初雪の降る日に地上へ降りていくことです。雪といっしょに降りてきたスノーンは、初めに出会った子供の願いなら、なんでもきいてあげるのです。雪の降る日は、スノーンの来る日。寒がりさんも外に出て、雪とお話ししてください。きっとすてきな願いがかなえられることでしょう‥‥
「ねえおねえちゃん!」 と、とつぜんケンの声。せっかく夢見ごこちで絵本を読んでいたユーリは邪魔されてご機嫌ななめ。「ねーいっしょにスケート靴さがしてよ。」「だめ! あたしはローズおばあちゃんに借りたすてきな絵本を読んでるんだから!」
今日はマリーベルたちとみんなでスケートに行く予定なのです。ケンにせっつかれて仕方なくケンの部屋に探すのを手伝いに行くものの部屋はめちゃくちゃ。靴を探そうと開けた戸だなからおもちゃの山が流れ落ちてきて押しつぶされたりさんざんな目にあってしまいます。
みんなはまだ来ないマリーベルを置いてスケートリンクにやって来ました。ところがいつも仲よしのユーリとケンの様子がおかしいとみんなは首をかしげます。ボンゴが聞いてみると「おねえちゃんったらホントに冷たいんだ。ホットドッグぐらい買ってくれたっていいじゃない。」「もう少しがまんしなさいっていってるだけでしょ!」「ふんだ! おねえちゃんは心の底から冷たい女なんだ。」「なんですって!」「まーまー、こんなところで兄妹ゲンカもなんだしね。」
ところがケンはユーリが大事に持っていたスノーンの絵本をさっとひったくって持っていってしまうのです。「買ってくれなきゃ絵本は返さないよ〜だ!」「ケン! 返しなさい!」
ケンを追うユーリ。「ほっときましょ、兄妹ゲンカなんだもん。そのうち飽きちゃうわよ。」 でもこの二人がケンカするなんてめったにないことなのです。「待ちなさい! ケン!」 ユーリが追いかけて絵本をつかむと二人いっしょに転んでしまいます。「ご、ごめんね。だいじょうぶ、ケン?」「う、うん‥‥」
ところがなんと、その転んだはずみに絵本がまっぷたつにやぶれてしまっていたのです。「お、おねえちゃんが引っぱるからだぞ!」 やぶれてしまった絵本を手に取って目に涙をためるユーリ‥‥
「ケンなんか‥‥ケンなんかだいっきらい!」 ユーリはやぶれた絵本を持って走っていってしまいます。「‥‥ぼくだっておねえちゃんなんかだいっきらいだ!」
‥‥ユーリはスケートリンクを後にして森を走っていきます。そんなユーリをつつみ込むように、ちらちらと雪が舞いはじめるのです。初雪‥‥雪の降る日はスノーンの来る日‥‥スノーンは、初めに出会った子供の願いなら、なんでもきいてあげるのです‥‥「もう、ケンなんか、いなくなっちゃえばいいんだわ!」 とつぜんユーリの横を突風がかけ抜けたかと思うと、なんと、ユーリの目の前にそのスノーンが現れたのです!
「おまえの願い、確かに聞き入れたぞ!」 スノーンは空を舞ってスケートリンクの方角へ向かって飛んで行くのです。「そ、そんな‥‥スノーンが本当にいたなんて‥‥たいへん! ケンが!」 しかしリンクにたどりついた時にはすでにスノーンがケンを連れ去っていくところだったのです。「願い通りこの子はもらっていくわよ!」 思わずへたりこんでしまうユーリ‥‥遅れてやってきたマリーベルも事情を聞いてびっくりします。
とりあえずスケートリンクを離れたマリーベルたち。「ユーリ、どうしてそんなこと頼んじゃったのよ?」「‥‥だって‥‥」 ユーリは今にも泣きだしそう‥‥「スノーンのことはよく知ってるけど、がんこだから一度聞いた願いは簡単には変えてもらえないわ。」「そんな! どうしようマリーベル‥‥」 とにかく、みんなで後を追って謝って返してもらうしかありません。魔法の香水を使って空の上の雪の世界へと向かいます。
‥‥やってきた雪の世界は辺り一面真っ白な美しいところ。入口を抜けたところに美しくそびえ立つ氷のお城、あれがスノーンの住む宮殿です。ちょうどケンをかかえて氷の宮殿に戻ってきたスノーンに出会ったマリーベルたち。「スノーン! ユーリのおねがいをとり消してちょうだい!」
「マリーベル、いくらあなたの頼みでも、一度聞き入れた願いを取り消すことはできないわ。」「ユーリだって本気じゃなかったのよ! お願いスノーン! ケンを返してあげて!」「マリーベル‥‥残念ね!」 スノーンが手をふるうと吹雪がユーリたちを襲います。「もぉ、雪の女王だけあってつめたいんだから! よーし、魔法の花吹雪よ、スノーンからケンを取りもどしてちょうだい!」 花吹雪に押されてケンを落としてしまうスノーン。「しまった!」「今のうちよ!」 ユーリはケンの手を取ると急いで逃げ出します。「待ちなさい!」「ばいばいスノーン! ごめんね〜!」 マリーベルたちはサニーベルの街へと帰っていきます。
「ふ〜、これでひと安心ね。」 ところが戻ってきてもまだユーリとケンはケンカを続けているのです。「おねえちゃん! ひどいよ、ぼくがいなくなればいいってスノーンにたのんだんだね!」「だってケンが絵本やぶいちゃうんだもん。」「あれはおねえちゃんがひっぱったからだろ!」「返さないケンがいけないんでしょ!」‥‥まだケンカを続ける二人にみんなはあぜんとしてしまいます。
そこにとつぜん襲いかかる吹雪。スノーンが再びみんなの前に現れるのです! 「私から逃げられると思っていたの? さっきのようにはいかないわよ、マリーベル!」
スノーンは木の高さほどもある巨大な雪だるまを出してマリーベルたちにせまります。「なによそんなもの!」 ところが花吹雪もまるで効きません。襲いかかってくる巨大雪だるまに逃げ出すみんな。「マリーベル! 相手は雪なんだから魔法で溶かしちゃいなさいよ!」 ビビアンのアイディアでマリーベルはお花の火炎放射器で応戦! さすがの巨大雪だるまもひるみます。
「そうはいかないわよ!」 スノーンの指先から放たれた光はお花の火炎放射器を凍らせてしまいます。一瞬ひるんだスキに雪だるまが投げた雪に埋もれてしまうマリーベル。襲いかかってくる巨大雪だるまにユーリたちは逃げ出します。ところがケンが足元を雪にとられて転んでしまうのです。「ケン!」 ユーリはあわてて戻ってケンをひっぱり、巨大雪だるまの攻撃をかろうじてかわすのです。「だいじょうぶ、ケン?」「おねえちゃん!」
「さ、おとなしくケンを渡しなさい!」「いやよ! スノーンなんかきらい!」 ユーリは絵本をスノーンに投げつけ、ケンを連れて逃げ出します。しかし後ろは湖、もう逃げ場はありません。ユーリたちを踏みつぶそうと雪だるまが足を上げた瞬間! ちょうど埋もれた雪から出てきたマリーベルが魔法でロープを張ってくれるのです。巨大雪だるまは足元に張られたロープに転んでしまい、湖に沈んでもろくもくずれてしまいます。
「よくもやったわね!」 再びスノーンの指先から放たれた光は今度はマリーベルを捕らえ、氷づけにしてしまったのです。「マ、マリーベルが凍っちゃった!」 しかもその一瞬のスキを突いてスノーンがケンを再び捕らえてしまうのです。「ケン!」
「スノーンは約束を守るわ! ケンは二度と人間の世界には返さないから安心しなさい!」 スノーンはケンをかかえて空を飛んでいくのです。
「待って! あたしが、あたしが悪かったの! ケンはいらないなんてひどいことを言ったから!」 ユーリはスノーンを追って走り出します。「お願い、ケンを返して! そのかわり、あたしが雪の世界に行きます! お願いスノーン!」 泣きながらスノーンにお願いするユーリ‥‥ケンも泣き出してしまうのです。「おねえちゃんがいなくなっちゃうなんてやだ! わるかったのはぼくの方なんだ、ぼくがわがまま言ったのがいけなかったんだ! ごめんなさいおねえちゃん‥‥」「あやまるのはわたしの方よ、やさしくしてあげなかったあたしがいけないの‥‥ごめんね、ケン‥‥」
いつの間にか降り出した粉雪の中でひとり泣くユーリ‥‥ふと気付くと、ユーリの目の前にスノーンが降り立っていたのです。「その言葉が聞きたかったのよ。二人の心が開かれるのを待っていたの。」「スノーン‥‥」 そしてスノーンはケンを返してくれるのです。「おねえちゃん!」「ケン!」 抱き合って喜ぶ二人‥‥スノーンは絵本を魔法で直してユーリに差し出します。「はい、もうケンカしちゃダメよ。」
凍らせたマリーベルも元に戻してあげます。「久しぶりね、マリーベル。ごきげんいかが?」「よくもあたしたちまでだましてくれたわね!」「あなたに話したら、ナイショのこともナイショじゃなくなっちゃうでしょ?」「失礼しちゃうわっ」 マリーベルはちょっとふくれ顔。ユーリとケンにも笑顔が戻り、そしてスノーンは再び雪の国へと帰っていきました。
雪の降る日はスノーンの来る日‥‥スノーンのおかげでユーリとケンは前にも増して仲よくなったのでした。
〈次回予告〉 〜 #44 「トゲトゲ草パニック」 〜 |
はーい、わたし、マリーベル。わたしのおじいさん、ジジベルが、花魔法界から種をおくってくれたの。ところがその中にトゲトゲ草の種がまじっていて、どんどん増え出しちゃったの。このままじゃ、サニーベルの街が、うんん、地球が、トゲトゲ草だらけになっちゃう! 次回、花の魔法使いマリーベル、『トゲトゲ草パニック』。マリーベルに、おまかせよ!
Marybell Story Digest Ver.1999.07.24