第42話 (92.11.16放映)

〈解説〉

 全話それぞれが名作とも言える本作品の中でも屈指の名作のひとつである。ビビアンの家庭事情は今の現代家庭のひとつのモデルとも言えるが、そんなさみしいビビアンに共感した視聴者も多かったであろう。

〈ストーリーあらすじ〉

 あさってはサニーベルの街が誕生してからちょうど百年目。その百年祭の準備で街は大にぎわいです。マリーベルたちもそのお祭りの仮装のことで話しあい。まだ来ていないビビアンを迎えに行くとちょうどバートさんが家を出ていくところ。ところがビビアンは二階のテラスでぼんやり空を見上げているのです。

 ビビアンの部屋に入ってみれば、そこはオモチャの山。「好きなのがあったら持ってっていいわよ。」 オモチャはパパとママが買ってくれたとか。でも考えてみたらマリーベルたちはビビアンのパパとママに会ったことが一度もありません。「まあね、あたしだっておんなじ家にすんでて二週間ちかく会ってないし‥‥」 二人とも仕事が忙しくてビビアンが朝起きる前に出かけて夜は寝た頃に帰ってくるのです。「そんなに会えないんじゃつまんないね。」「べつに。もうずっとこうだし、それにおじいちゃんだっているもん。」

 お祭りの話を持ち出すと、ビビアンは幼稚だから参加しないと言います。「でも、パパとママはお祭りに来るんでしょ?」「無理無理、あたいの誕生日だって仕事で帰ってこないのに、お祭りだなんて‥‥ははは‥‥」 強がってるけどほんとうはさみしいビビアン‥‥

 ところがうまい具合にビビアンのパパとママの両方とも百年祭の日に休みが取れたのです。次の日にそれが分かったビビアンはにやけ顔でフラワーショップに。みんなと一緒にビビアンもはりきって仮装行列のための衣装を作るのです。

 そして百年祭の日。お祭りは夕方からだというのにビビアンは作ったカエルの衣装を着て街中を楽しそうに歩きまわるのです。「あんなにうれしそうなビビアンはじめて‥‥」「無理もないわ、親子で出かけるなんて今までなかったんですもの。」

 夕方になってみんなで待ち合わせして百年祭の会場へ。ところがビビアンはたった一人でやって来たのです。「‥‥急にお仕事が‥‥」「どうして!? ビビアンがあんなに楽しみにしてたのにどうして!」「あたい‥‥うちで待つ!」 ビビアンはみんなを残してひとりで走ってゆくのです。それを追いかけるマリーベルたち‥‥

 ビビアンはひとり思い出の木の下でうなだれていました‥‥「ビビアン、あたしがパパとママの様子を見てくる! だから元気を出すの! 待っててねビビアン!」 マリーベルはビビアンのパパとママを探しに‥‥しかしあまりにビビアンが悲しそうで残ったみんなは声をかけるにかけられません。ふっとビビアンは明るい顔で向きかえると「なによなによみんな、お葬式みたいな顔しちゃって。あたいなら平気よ、もともとお祭りなんて興味なかったんだし。それよりあたいに協力してくれない?」

 マリーベルはビビアンのママのいるテレビ局へ。「要するに、パパとママのお仕事さえ終わればいいわけよね。魔法の花時計よ出ておいで!」 スケジュールの都合で急に収録することになったテレビ番組も、これで時間を早めてすぐさま終了。一方のパパの仕事の方もあっという間に終わるのです。

 ところがそのころ、家の方では大変なことが起こっていました。なんと、ビビアンがいなくなってしまったというのです。ユーリたちからその話を聞いたバートさんは大あわて! 「いつ、どこでいなくなったんじゃ!」「たぶんパパとママがお祭りに来ないのがショックだったんだ。」「バカをいえ! あの子はちゃんと親の仕事を理解しておる!」「でも、ホントにいなくなったんだ!」「ま、まさか!」 なんとバートさんはビビアンが誘拐されたと思い込んで警察に連絡。連絡を受けたブラとノッポもすぐさま手配をします。

 一方ビビアンはのんびりハンバーガーをかじっていました。というのも実は全部ビビアンが仕組んだこと。自分がいなくなったと聞いたらパパとママはきっと仕事をほおり出して来てくれる、そう思ったのです。ところがそれが誘拐騒ぎになっていると気付いてビビアンは大あわて! 街じゅうお祭りどころじゃないと大騒ぎになっていたのです。

 「なんとしてもビビアンを探し出してくれ! この通りじゃ!」 街じゅうの人がビビアンを探しに出かけます。あまりの大騒ぎになってしまって言うに言い出せず困ってしまうユーリたち‥‥そこにマリーベルが帰ってきても黙ったまま。

 何も知らずに帰ってきたビビアンのパパとママ。「お父さん、この騒ぎは一体‥‥?」「なにをのんきな! ビビアンが誘拐されたんじゃぞ!」 その言葉に驚く二人。「最後にビビアンを見たのは誰なんです?」‥‥みんなのところにやってきたビビアンのパパとママ。「ねえ、ビビアンになにか変わったことなかった?」 その言葉にとうとうユーリたちは泣き出してしまうのです。

 ‥‥話を聞いてビビアンとの待ち合わせ場所にやってきたみんな。ところがそこにはもうビビアンはいなかったのです。騒ぎの大きさに驚いてビビアンは逃げ出したみたいなのです。「まったくビビアンのやつめ、いったいなんでこんな嘘をつきおったんじゃ! 帰ってきたらおしりペンペンじゃ!」

 「そんなのないわ!」 バートさんの言葉にマリーベルは怒って言うのです。「なによ勝手なことばかり言って! もとはと言えばビビアンのパパとママがいけないのよ! ビビアンが今日のおまつりをパパとママといっしょに見れるってどんなにたのしみにしてたと思うの?! それなのに‥‥それなのに! ビビアンは‥‥パパとママに帰ってきてほしかったのよ‥‥いっしょにいてほしかっただけなのよ‥‥かわいそうなビビアン‥‥」

 いつの間にか降り出した雨‥‥「君‥‥マリーベル‥‥だね?」「こんなに心配してもらえて、本当にありがとうマリーベル‥‥」「マリーベルの言う通りだ、悪いのは私たちだよ。」「仕事ばっかりで、ビビアンと遊んであげなかったのがいけなかったのね‥‥反省しているわ‥‥」

 「ビビアンに、謝らなくちゃいけないな‥‥」「分かってくれたの?」「ああ‥‥」

 とにかくまずはビビアンを探さなくては。街中のみんなで手分けしてビビアンを探すのです。しかしどこを探してもビビアンはいない‥‥雨足は強くなる一方なのです。

 ビビアンは裏道を雨の中ひとりさみしく歩いていました。歩いているうちに見つけたパレードの車に乗り込むビビアン。ところが猫がじゃれてトレーラーの切り離しレバーを倒してしまい、車はゆっくりと坂を下りはじめるのです。ビビアンがそれに気付いたときにはすでに遅く、車は猛スピードで坂を下っていきます。

 ‥‥ビビアンがどうしても見つからずに集まるみんな。みんな肩をうなだれて疲れきった様子‥‥突然ビビアンのママがふっと顔を上げます。「今、ビビアンの声が!」「私にも聞こえた! こっちだ!」 ビビアンのパパとママは走り出します。坂の下までやってきたパパとママの二人に向かってビビアンの乗った車が突っ込んでくるのです!

 しかも坂はそこで行き止まり! このままでは壁に激突してビビアンもろとも大破してしまいます。ビビアンのパパは、なんと、その猛スピードで突っ込んでくる車の前に立つのです。「やめてパパ! 逃げて!」 車が突っ込んできてみんなが目をそむけた瞬間! ビビアンの車はパパの前でぴたりと止まりました。マリーベルが花魔法で車を止めてくれたのです。「やった! 止まった!」 思わず泣き出してパパに飛びつくビビアン‥‥「ビビアンよかった‥‥」「ごめんなさいね、パパとママがいけなかったわ‥‥」「許しておくれ、ビビアン。これからはおまえともっと遊べるように仕事を考えるよ。」 親子でゆびきりげんまんして約束するのです。

 「ビビアンほんとにうれしそう。」「よかったね、ビビアン!」 こうしてビビアンに笑顔がもどったのでした。

〈次回予告〉 〜 #43 「雪の降る日の願いごと」 〜

 はーい、わたし、マリーベル。初雪がふる日は、雪の妖精スノーンが降りてくる日。スノーンは、そこで出会った子供の、どんな願いでも、ひとつだけかなえてくれるの。ところが、ケンとケンカしたユーリのお願いは、とんでもないものだったの。次回、花の魔法使いマリーベル、『雪の降る日の願いごと』。マリーベルに、おまかせよ!


  

Marybell Story Digest Ver.1999.07.24